終電車ならとっくに行ってしまった


新潮社 <2010年> 1400円(税別)
四六判上製/160ページ
装丁・名久井直子


この本は、文芸誌『小説新潮』に二年半ほど連載された作品をまとめたものです。

随筆部分が見開き4ページ。
漫画が見開き2ページ。

交互に折り重なるように一冊になっています。

随筆部分はその意味通り、頭に浮かぶよしなしごとを筆にまかせて書いたエッセイです。

・遠い記憶をたぐりよせる思い出話。
・「あれはなんだったんだろう」という不思議な体験談。
・日常の疑問。
・ちょっと怖い話。
・ひろがる妄想。

そんなあれやこれやです。

漫画部分は、その文章を受け、さらに想像を広げて描いたフィクションです。

登場するキャラクターは、ナマケモノ。
もともと人間っぽい体型の動物ではありますが、これはナマケモノの擬人化です。
彼は和室の古アパート暮らし。友達も彼女もいない、半ば引きこもりです。

特に漫画部分は連載時とはかなり違います。単行本化にあたって大胆に手を入れました。
絵柄も、ストーリーも、単行本ならではの内容になっています。


装丁は『情熱大陸』に出演して株を上げたと、もっぱらの評判の名久井直子さん。
「いつものフジモトの本よりも、文芸寄りのイメージで」というリクエスト通り、とても落ち着いた雰囲気。しかし目立つ書名。そしてよく見ると漫画が入っていることでもわかるという、隙のない装丁です。

ぜひお手にとってご覧ください。